エゼチミブがマウスのC型肝炎ウイルス感染を抑制――コレステロール吸収受容体NPC1L1は抗HCV薬の新たな標的として有望

時間:2012-01-19

 コレステロール吸収受容体であるNPC1L1蛋白が、C型肝炎ウイルス(HCV)の肝細胞への侵入にかかわっており、同蛋白の阻害薬エゼチミブにHCVの感染抑制効果があることが、in vitroおよびin vivoの研究で明らかになった。米Illinois大学Chicago校のBruno Sainz氏らが、Nature Medicine誌電子版に2012年1月8日に報告した。

 HCVは、ウイルス粒子上の様々な成分とヒト細胞表面に存在する一連の受容体の相互作用を経て細胞内に侵入する。著者らは、ウイルス粒子上のコレステロールがHCVの感染で役割を持つことに関心を持ち、ヒト細胞に存在するコレステロール吸収にかかわる受容体が感染成立に関与するのではないかと考えた。

 NPC1L1はヒトの小腸細胞と肝細胞に発現し、細胞のコレステロール取り込みと全身のコレステロールの恒常性維持に関係している。著者らはまず、ヒト肝細胞株Huh7を用いて、in vitroでHCV感染とNPC1L1の関係を調べた。その結果、NPC1L1の発現はHCVの感染に必須であること、NPC1L1特異的抗体を用いたNPC1L1のブロック、またはsiRNAを用いたNPC1L1発現の抑制で、HCVのヒト細胞への感染が抑制されることが明らかになった。

 既に日本を含む多くの国で承認を得ているエゼチミブは、NPC1L1の機能を阻害することから、著者らは、この薬剤がHCV感染を阻害するかどうかを評価した。Huh7細胞にエゼチミブを加えて6時間後にHCVを感染させると、エゼチミブの用量依存的に感染は抑制された。細胞にHCVを加えた後にエゼチミブ処理すると、より高用量を投与した場合にのみ感染抑制が見られた。

 なお、エゼチミブはin vitroで、主なHCVジェノタイプ(1a、1b、2a、2b、3a、4a、5a、6a、7a)の全ての感染を抑制した。

 次に、ヒトの肝細胞を植え付け増殖させた免疫不全マウスに、HCVジェノタイプ1bに感染したヒト患者由来の血清を静脈内投与するin vivo曝露実験を行い、エゼチミブの効果を調べた。エゼチミブ10mg/kg/日の経口投与をHCV曝露の2週間前、1週間前、2日前から行う3グループに分け、いずれも3週間継続した。

 その結果、曝露後1週間の時点で、感染前に2週間エゼチミブを投与されたマウスでは、7匹のうち5匹(71%)がHCV RNA陰性だった(エゼチミブ非投与の対照マウスでは5匹中0匹、差はP=0.0192)。同様に、感染前に1週間エゼチミブ投与を受けたグループでは、7匹中3匹(43%)がHCV RNA陰性だった(エゼチミブ非投与の対照マウスでは4匹中0匹、差はP=0.062)。曝露2日前から投与されたグループではエゼチミブ投与の影響は見られなかった。

 曝露から1週間の時点で感染が見られなかったマウスも、その後多くがHCV RNA陽性となったが、2週間前からエゼチミブを投与されたグループの2匹は曝露2週後と3週後もHCV陰性の状態を維持していた。

 エゼチミブは少なくともHCV感染成立を遅らせる作用を持つことが明らかになった。著者らは、「経口投与した場合には、エゼチミブはまず小腸細胞表面のNPC1L1に結合するため、肝細胞への送達を高めて抗HCV効果を増強するための投与経路または送達法を開発する必要があるだろう。また、HCV感染の阻止に特化したNPC1L1阻害薬の開発も待たれる」と述べている。

 原題は「Identification of the Niemann-Pick C1-like 1 cholesterol absorption receptor as a new hepatitis C virus entry factor」、冒頭部分は、Nature Medicine誌のWebサイトで閲覧できる。

http://medical.nikkeibp.co.jp/